鍼ってクセになる?という疑問への答え:鍼灸師が感じていること
名古屋・伏見エリアの鍼・灸・指圧の治療院『Lighpe(ライペ)』です。
今回は、施術の中でときどき聞かれる、
「鍼ってクセ(癖)になるんですか?」
という言葉について、日々感じていることを少し整理しながらお話ししたいと思います。
はっきりした答えがあるようで、実はとても奥が深いこの質問。
私自身、聞かれるたびにどこかモヤっとしていて、うまく言葉にできない感覚をずっと持っていました。
この違和感を手がかりに、少しずつ考えを巡らせていくと、見えてきたことがありました。
「クセになる」という言葉に、引っかかった理由
「鍼ってクセになりますか?」
この質問をきっかけに改めて考えてみると、「クセ」という言葉そのものが、少し引っかかる表現だなと感じます。
無意識のうちにしてしまうことや、本当はやらなくてもいいこと、どちらかというと良くないイメージの行動を指す言葉として使われることが多いですよね。
そう考えると、鍼に行くことを「クセ」と表現すること自体、どこかズレているようにも感じます。
でも、質問してくださる方を責めたいわけではなくて、
「この質問の奥には、何を知りたい気持ちがあるんだろう?」と、ずっと考えていました。
「鍼は依存する?」という不安と、発想の出発点の違い
自分なりに考えてみると、この質問の裏には、
鍼に頼りすぎてしまうのではないか、ずっと通わないとダメな体になってしまうのではないか、さらには依存のような状態になるのではないか、
そんな不安が隠れているのかもしれないな、と思うようになりました。
ただ、それでもどこかしっくり来ない、腑に落ちない感覚が残っていました。
そんなとき、定期的に通ってくださっているお客さまに、この話題をふってみたんです。
すると返ってきたのが、とても印象に残る一言でした。
「たぶん、発想の出発点が違うんじゃないですか?」
その言葉を聞いた瞬間、いろいろなことがつながった気がしました。
「鍼ってクセになるの?」と聞かれる方は、肩こりや腰痛など、今出ている症状を早く何とかしたいという気持ちが強い場合が多いように感じます。
症状が出たら行く。落ち着いたらやめる。また症状が出たら行く。
そうした“対処”のイメージで鍼を捉えていると、何度も通うこと=「結局治っていない」という感覚になりやすいのかもしれません。
その結果、「クセになる」という、少しマイナスな響きの言葉につながっていたのではないか。
そう考えると、ようやく腑に落ちました。
普段、私が接しているのは、「体を整える」という感覚をすでに持っている方が多く、だからこそ「鍼ってクセになるんですか?」という質問に、しっくりくる答えが出てこなかったのかもしれません。
そもそもの捉え方、その出発点が違っていたのだと、ここでようやく気づいた気がします。
鍼はクセではなく習慣|メンテナンスとして通うという考え方
定期的に通ってくださっている方の多くは、つらい症状が出たときだけ対処するために通っている、というよりも、日頃から体の状態を整えるための「メンテナンス」や、不調をできるだけ遠ざけるためのケアとして通われている印象があります。
この感覚は、歯医者さんに通うときの考え方に少し似ているかもしれません。
痛みが出てから慌てて通うのではなく、虫歯や歯周病を防ぐために、定期的に検診やクリーニングを受ける。そんなふうに「何か起こる前に整えておく」という意識が、今ではずいぶん身近になっていますよね。
体のメンテナンスも、本来はそれと同じような感覚で通ってもらえるものだと思っています。
ただ、歯と大きく違うのは、体の歪みや巡りの滞りといった変化は目に見えにくいということ。痛みや不調としてはっきり表に出るまで、自分ではなかなか気づきにくいのが現実です。
そのため、鍼灸やマッサージに定期的に通うことが、「予防」や「メンテナンス」という認識につながりにくく、結果として「クセになっているのでは」「依存しているのでは」といったイメージで受け取られてしまうこともあるのかもしれません。
でも実際には、それはクセや依存というよりも、歯磨きやスキンケアと同じような「習慣」に近いもの。
無意識にやめられなくなる行動ではなく、自分の体の状態を見ながら、納得したうえで選び、続けていけるケアなのだと感じています。
初めての鍼が不安な方へ|当院の考え方
一方で、鍼にあまり馴染みのない方にとっては、どんなことをするのかよく分からない、少し怖い、始めたらやめられなくなりそう、そんな不安があって当然だと思います。
未知のものに対して疑問が出てくるのは、ごく自然なことですよね。
当院では、鍼治療だけを行っているわけではなく、お灸や指圧マッサージなども含めて、その方の状態やご希望に合わせた施術を行っています。
「鍼ありき」ではなく、いくつかの選択肢の中から、今の体に合いそうな方法を一緒に探していく、というスタンスです。
だからこそ、無理に鍼を続ける必要もありませんし、「始めたらやめられない体になる」ということでもありません。
体を整えるための手段のひとつとして、必要なときに、必要な形で選んでもらえたらいいなと思っています。
多くの方は、最初から「メンテナンスをしよう」と思って来院されるわけではありません。
肩こりや疲れなど、何かしらのつらさをきっかけに足を運び、通ううちに「なんとなく調子がいいかも」と感じる時間が増えていく。
その中で、定期的に体を整えるという選択肢が、自然と浮かんでくる方もいらっしゃいます。
「そういう見方もあるんだな」と、ふと心に引っかかる方が少しでもいれば、とても嬉しく思います。
鍼は、体を整えるための手段のひとつ。
その時々の状態に合わせて選ばれる選択肢のひとつとして、
もっと肩肘張らず、日常の身近なケアとして感じていただけたらと思います。